雑記 V系の受難
V系の受難
ヴィジュアル系って、いつのまにかV系って呼ばれるようになったね。
まあ、「ヴィジュアル系」って言葉自体が、もともとは蔑称だからね。
このジャンルを支持する人たちにとっては「V系」のほうが都合がいい。
「俺、ふだんヴィジュアル系、聴くんすよ」ってのと
「俺、ふだんV系、聴くんすよ」ってのでは
カミングアウトする方としては断然、後者の方がいいんですよ。
言葉の文字数が少ないから、恥ずかしい時間が短いのだよ。
しかも「ヴィジュアル系」って言葉を出した時点で、
「お前の見た目で、『ヴィジュアル』とかぬかしてんじゃねえ」って
思われてそうで、口にするのはためらわれる。
…と、まあ、V系は、やってる方も支持する方も、迫害されてると思うわけですよ。
で、迫害される理由。
<その1>中二病みたいな見た目
金髪、銀髪。黒っぽいアニメキャラみたいな衣装。メイクにカラコン。女装のメンバー。意味ありげなポージング。暗い背景のアー写。
よくアンチの人たちが、ロックをやるには過剰なルックスだ、とか、歌で勝負できないのか、とか言うけど、V系の場合、見た目も表現の1つだから。
俺から言わせれば自己プロデュースの力がずいぶん長けてて頼もしいと思うくらいだけど。
まあ、アンチの人たちはたぶん、自己陶酔全開の引きこもりみたいな雰囲気が嫌なんでしょうね。
<その2>中二病的な歌詞とアニソン、メタル経由の曲調
歌詞のほぼ7割は、世界に絶望して自分の中に閉じこもる的な内容か、退廃的なサドマゾゴシックな倒錯したラブソングだ。
鳥、特にカラスが多く登場する。「僕をここから連れ出して」みたいなワードもよく出てくる。
※書いてて面白くなってきたので、そのうち別の雑記で「V系あるある」やります。
曲調はHR/HM系の暗くて速いやつ。アニソンとかゲームミュージックとも近い。
洋楽ロックマニアの人たちは、メタルおよび歌謡曲/演歌を馬鹿にする傾向があるよね。
まず、日本の音楽と英米の音楽の違いって、言葉とコード進行とかメロディラインでの半音とかのずれなわけでしょ?
これが理解できない日本人の音楽センスは白痴だっていうのは乱暴だよ。
コード進行とかメロディラインの違いはその国の文化だから。
英米文化の大多数が認める音楽が優れていて、少数民族のやってる音楽はダサい音楽だって、言ってるようなもんでしょ?
まあ、百歩譲って、英米のアーティストは音楽的感覚が優れていて、いつも画期的で最新鋭の音楽を提供しているから素晴らしいということにしよう。
でもな?
それはアーティストの感覚がイケてるだけで、それにぶら下がって、こっちのことを馬鹿にしてるテメらは全っ然イケてねえからな?!
…まあ、これについては言い足りない部分もあるので、またあとで語らせてもらおうかな(こればっかりだな…)。
<その3>ファンが痛い
ファンに中二病で引きこもり気味なコミュ障が多いのは事実。それとは別にバンギャと言われる少女たちはマナーが良くない子もいるし、あと、ライブ当日はコスプレイヤーが一般人に迷惑をかけることもある。
ファンがこのジャンルを貶めている一面があることは否定できない(それはジャニーズやエグザイルやAKBのファンにも言えることなのだが)。
とまあ、V系が迫害を受ける理由はこの3点じゃないでしょうかね。
ただ、この3点って、裏返してビジネスとして考えると、強みに換えることが多いんだよねえ。
見た目や音楽の世界観って、日本発祥のアニメやゲーム、フィギュアといったオタクコンテンツと親和性が高くて、これと組み合わせると、オタクコンテンツ業界もV系業界もお互いを補い合って儲かっていくと思うんだけどなあ。
普通の見た目のバンドの兄ちゃんがアニソン歌うよりも、V系のやつらがキメて歌う方が外人は喜ぶと思うんだけどな。
と思うのだが、アニメ主題歌の枠を声優の人たちに獲られつつあるのは痛い失点だね。
もっと、営業かけなきゃ!…いや、もう遅いのか…
アニメといっしょにヴィジュアル系を輸出できるチャンスを失ったよね。
ファンの熱狂ぶりと痛さは、ある種、阪神ファンとかフーリガンとか日本のハロウィンみたいなもんだから、これも「炎上」で悪目立ちさせて世界に発信しちゃえば宣伝になるじゃん?
…ね?V系の失地回復できなくないんだよ。もったいないねえ。
とは言え、ね?
俺たちにとってはね、
この人たちが歌う世界観じゃないと、自分のハートに届かないのさ。
カッコつけの中二病ソングと罵られようが。
リア充の人たちの歌うラブソングとか自己肯定ソングとかは、自分とは違う世界すぎて、聴けば聴くほど、苛立つし、気落ちする。
V系の演奏ってる中二病みたいな音楽が本当に必要な人っているんだよ。ここに。
だからな?
ほっとけって。俺らのことは。
「明日こそはと生きてて迷惑かけたか?」(hide:「damege」より)
マイフェイバリットナンバー
マリスミゼル「オルヴォワール」:ヴィジュアル系にゴシックを持ち込んだ革命的なバンド。GACKTが在籍した。この曲ができるまでのメンバー同士の激しい紆余曲折が想像もできないセンチメンタルな曲。秋に必ず聴きたくなる名曲。
the gazette「FILTH IN BEAUTY」:ネオヴィジュアル系の1つの到着点、金字塔ともいえる名曲。ダンスやヒップホップの要素を取り入れながらもハードロックに仕立てあげた。それまではDIR EN GREYのフォロワーの1つとされていたが、この曲の成功で人気を不動にした。
X JAPAN「X」:今でこそV系は内向的なオタクの音楽だが、この人たちはどっちかというと暴走族寄り。間違いなくV系の源流だが、この人たちのヤンキーの血が少しでも残っていたらV系はもっと違う風景が見れたかもしれない。ファンの「Xジャンプ」が見れることで有名な曲だが、歌詞も曲も、バイオレンスな香りを漂わせて最高にイキがっていて、気持ちのいいナンバー。
黒夢「LIKE @ ANGEL」:若き日のボーカリスト清春の才能が疾走しまくったバンド。退廃と耽美と狂気がコンセプトのアングラな感じのバンドだったが、この曲を境にパンクバンドへと変貌を遂げる。初期のV系然とした曲から後期のパンクの曲、すべてにおいて勢いに停滞がない。清春本人のパーソナリティがより反映された曲。
カリ≠ガリ「ブルーフィルム」:「密室系」とも呼ばれ、V系の中でも異形の部類に入る。天才肌のギタリスト(ギターテクニックはアレだが…)桜井青の存在抜きでは語れないバンド。「ゲイ」「ドラアグクイーン」「エログロ」「発狂」といったアングラやマイノリティをコンセプトにしているが、見た目のカオス感がセンス良く突き抜けている。ゲイ同士がピンク映画館で情事に溺れながら傷を舐め合うという内容の歌詞と、アップテンポで明るめの曲調が、センチメンタルな気分にさせる。